内容紹介(1)

当研究室の発生研究についてごく簡単に紹介します。

胞胚の模式図

(←図1)

これはカエル胚の 胞胚 (受精後半日くらい) の模式図です。1000個程度の細胞でできています。まん中やや上方には、胞胚腔 (ほうはいこう) と呼ばれる空洞ができています。この空所の天井部分にあたる細胞が外胚葉でであり、空所の脇にあってぐるりと空所を囲む位置にある細胞が 中胚葉 です。空所の下には卵黄をたくさん含んだ 内胚葉 が大きく広がります。このうち、中胚葉の部分からは血液細胞や、腎臓、筋肉、心臓、せきさくなど、いろいろな器官ができてきます。当研究室では、この中胚葉で発現する遺伝子の中でもある遺伝子 (tbx6と呼ばれる転写因子) に注目して解析しています。



ホールマウント染色
(図2→)

これは tbx6 の発現している場所です。この写真は 神経胚 (受精後1日半くらい) です。左が頭側、右が肛門側で、背中側を見た写真です。この遺伝子が発現している場所は青く色づいて見えますが、それは正中線の両わきに位置していることがわかります。




神経胚の切片

(←図3)

これは図2の神経胚の断面を作成してみた写真です。上が背中側、下が腹側です。一番上に外胚葉である神経板、その下に中胚葉である脊索と側板中胚葉がひろがり、その下には大きな内胚葉の領域があります。tbx6遺伝子の発現部位は中胚葉であり、将来の体節になる部位と側板中胚葉と呼ばれる領域が染まっていますが、正中線上の中胚葉である脊索ではすっかり抜けている (発現していない) ことがわかります。









(図4↑)

そこで実験です。この写真は、左側が正常な尾芽胚の筋肉を抗体で染めたものです。体節に由来する筋節と、筋節から腹側へと動いてできた腹筋(腹側体壁筋)が茶色に染まっています。その他、目を動かす筋肉なども少し染まっています。右側はtbx6のmRNAが正常にできないようにしたノックダウン胚です。tbx6をノックダウンすると、筋節の骨格筋が減少し、節の境目がまったく判別できなくなります。さらに腹側体壁筋は全くといってよいほど分化しません。


(図5↑)

この写真は、図4と同じようにtbx6をノックダウンした胚をさらに育てたもので、*の印のついた側が蛍光トレーサーを注射した側です。写真の左側は蛍光トレーサーと共に5misと呼ばれる対照物質を注射した写真であり、正常な頭部およびエラの軟骨が観察できます。右側は蛍光トレーサーと共にTbx6のノックダウン物質を注射したものであり、頭部の縮小が観察され、軟骨染色の結果をみても注射した側の軟骨分化が著しく阻害されていることがわかります。(外形は背側から、軟骨は腹側から撮影したものです)。

以上を簡単にまとめると、tbx6の機能阻害によって、体節の分節形成不全、体節からの骨格筋分化が阻害され、さらに前方においては頭部神経堤からの軟骨形成が阻害されます。この後者の軟骨形成不全の理由ですが、咽頭領域に存在する沿軸中胚葉の分化が不十分であり、そのためにその領域へと下ってきた頭部神経堤の軟骨への分化が阻害されていると考えています。

当研究室はこのような カエルの発生におこるダイナミックな細胞分化や形態形成のしくみ を明らかにしてゆきたいと考えています。

次のページには、再生に関する研究内容 があります。

興味のある方は、 研究概要 もご覧下さい

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