高校生のための講座 
2006.8.12 (土) 10時〜16時過ぎ


実験内容: アフリカツメガエルの解剖(オス、メス)、卵巣と精巣、卵母細胞と精子の観察、胚操作のための手術用タングステン針の作成、原腸胚原口上唇部の切り出しと宿主胚の胞胚腔内への挿入(Einsteck experiment)

当日はやることも多く、1つ1つについて必ずしも丁寧に操作できませんでしたが、8名の参加者の皆さんの努力で3匹の移植胚が得られました。当日夕刻には、胚が細長い形になり始めましたので(神経胚になったことを意味します)、室温が非常に高いということに気づき、すぐに20℃の部屋に移してその後培養しました。本当ならば翌日に観察すべきでしたが、これを怠り翌々日(月曜日)の朝、3匹の宿主のうち2つについて、フォルマリン固定後に写真を撮りました。

写真: 宿主胚1(左上、左下)、宿主胚2(中上、中下)、正常胚(右上、右下)上は青バック、下は白バックで同じ個体の写真。

これを見ると、宿主胚の腹のところに突起物ができているのがわかります。この場所は心臓のそばなのですが、胞胚腔が陥入運動のために押されて最後にたどり着く場所にあたります(そこで胞胚腔は最後には消失します)。この膨らみの中にどんな組織が含まれるのかは、顕微鏡切片を作成しないとわかりません。しかし、この部分が2次胚である可能性が高いと考えられます。

今回用意した原腸胚は、初期のものがなくて原口がリング状になった原腸胚中期のものが大半でしたので、原腸胚初期から単離される原口上唇部(=頭部オーガナイザー)ではなくて、胴部ないし尾部オーガナイザーを移植したものと思われます。シュペーマンは2種のイモリを使い分けることによって、移植された細胞と宿主の細胞を区別し、移植した側と移植された側がそれぞれ何に分化したのかを分析して、『誘導』という概念を打ち立てました。今回は移植する側もされる側もアフリカツメガエルですから、そのままでは区別できませんが、現在ではドナー胚をあらかじめ蛍光色素でラベリングしておく方法がよく採られます(蛍光色素の入った生理食塩水に漬けおく方法と、注射する方法があります)。こうしておくと、蛍光顕微鏡下で観察したとき宿主の中にラベリングされた細胞群があることが確認できます。今回は時間の都合もありますが、そこまでの準備はしませんでした。しかし限られた時間内で、しかも練習もなしにいきなりの移植実験でしたが、努力すればある程度の確率で成功する実験なのだということが感じていただけれるものと思います。


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