内容紹介(2)

再生研究関係についてごく簡単に紹介します。

左の写真はマウスの ES細胞 (胚性幹細胞)です。この細胞は、様々な細胞へと分化できる多能性 (Pleuripotency) をもっています。

この細胞をシャーレの中で未分化な状態で培養するには、フィーダー細胞が普通は必要です。まずフィーダー細胞の層を1層つくっておき、その上に ES細胞をまきこむと丸いコロニーができます。

コロニーをそのまま培養し、大きくなるがままにするとコロニーの中に様々な細胞が分化してきます。研究の材料としてはES細胞を未分化な状態で増やす必要がありますので、細胞が未分化な状態で培養できているかどうか、チェックしています。左の写真の赤く着色した細胞は、未分化であること確かめる染色をしてあります。








左の写真は、ES細胞をフィーダー上から剥がして、お互いに接着させたもので胚様体(embryoid body)と呼ばれます。

胚様体をそのまま長期間培養すると、その中に様々な組織が分化してきます。しかし分化の制御をするには、長い間胚様体のままにするのではなく、数日間培養してから、目的の培養条件下に移すことがよく行われます。










胚様体にnogginというBMPを抑制するタンパク質を5日間加えて培養すると、神経が分化します。左の組み写真の左側は、神経が分化した際の神経幹細胞のマーカーであるnestinと細胞骨格であるβチューブリンに対する抗体染色結果ですが、nestin陽性であり、βチューブリン陽性の神経突起様の構造が見られます。









上記と同じ条件で、nogginを加えた5日間にTbx6遺伝子をTet-offシステムを用いてOnにしておくと、nestinやβチューブリン陽性細胞の数が激減し、神経突起様の構造物もほぼなくなります。このように、ES細胞が神経分化する際、Tbx6は神経分化を明白に抑制することがわかります。










ES細胞を2日間、ハンギングドロップにより胚様体形成させ、その後3日間非接着シャーレ中で浮遊培養し、その間にKY02111というWntシグナル阻害剤を加えます。その後接着シャーレへと細胞塊を移し、10日間培養しました。
Tbx6をOnにしなかったものでは、シャーレ中に心筋マーカーを発現する細胞が小さめの集団として現れます(左)が、ハンギングドロップ以後の13日間Tbx6をOnにした細胞塊では、心筋マーカー陽性細胞が非常に増えています(右)。

このように、Tbx6は神経分化を抑え、心筋を増加させるはたらきがあります。




当研究室では、カエルにおける中胚葉分化の研究を通じてみえてきた転写因子のはたらきを念頭に、哺乳類の胚性幹細胞が様々な細胞分化をおこす条件を検討しています。


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